人は睡眠で成長する
御社では、メタボリック症候群の対策として、万歩計を配ったり、フィットネスプログラムを用意されていますか?
従業員の方々の昼間の運動量を増やすことは、身体面の健康管理に有効ですが、もっと確実に毎日実行できる対策があります。それが睡眠です。
健康な人を2日間4時間睡眠に制限すると、満腹を感じるレプチンというホルモンが減り、食欲が刺激されるグレリンというホルモンが増えて、食事量と体重が増加します。
また、4時間睡眠を6日間継続すると、血糖値を下げる能力である耐糖能が低下することや、3日間深い睡眠が奪われると血糖値を下げるインシュリンの能力が25%低下することが明らかになっています。
それに対して、睡眠が改善すると、体重減少につながる例もあります。
睡眠は、誰でも毎日必ず行う作業なので、その効率を高める技術を持つことは、身体面の健康管理に大きく貢献します。
「仕事でストレスが多いから眠れない」
社員の健康調査アンケートから、こんな相談が寄せられたという経験はありませんか?
そんなとき、ストレスが解消できるように、休暇制度を設けたり、リフレッシュプログラムをつくる必要がある、と考えるかもしれません。
ただ、ここで脳の基本的な仕組みに立ち返ってみると、視点を変えることができます。
それは、健康な人たちの睡眠を奪うと、どうでも良いことでもストレスに感じる脳が出来上がる、ということです。
睡眠が削られると、脳内の扁桃体(へんとうたい)という部位の活動が活発になります。扁桃体は、自分にとって害になる刺激に素早く反応し、対抗するか逃避する準備をする部位です。
扁桃体が過剰に働くと、些細なことでイライラしたり、人の話を悪くとらえたり、被害的になることがあります。
普段は、扁桃体が過剰に働かないように、前頭葉が抑制をしているのですが、睡眠が不足するとその抑制が解除されてしまい、あらゆることにストレス反応を生み出してしまいます。
職場からストレスを消すことはかなり困難ですが、個人の睡眠力を高めて扁桃体が過剰に働かないようにすることなら今日からすぐにできます。
毎日元気に働いていても、物忘れやうっかりミスが気になるという社員の方々からの相談が多くみられます。
脳には、健全な働きを維持する仕組みが備わっています。その仕組みが使われるのもまた、睡眠中です。
脳内の老廃物の1つである、異常たんぱくのアミロイドβ。認知症の原因物質と考えられていますが、これを脳の外に排泄する役割を担っているのが、脳リンパです。
脳内のリンパ液が動脈から静脈へ老廃物の排泄を促すことで、健全な脳の働きが保てるのですが、この脳リンパは主に睡眠中に働きます。
睡眠を削ったり、質の悪い睡眠をとることは、脳内に老廃物を溜めて、脳を働かせないようにする行為です。
毎日の睡眠の量と質を高めることができれば、スッキリと集中できる脳を保つことができます。